JF日本語教育スタンダードを利用したコースデザインの試み

郭 穎侠(香港中文大学専業進修学院)

キーワード:  JF日本語教育スタンダード; コースデザイン; 総合日本語; 目標設定; 評価

要旨

本研究はHigher Diplomaプログラムで日本語を専攻している日本語学習者対象のコースデザインの試みである。香港中文大学専業進修学院では2012年9月から「応用日本語」(Applied Japanese Language)という日本語専攻の「高級文憑課程」(Higher Diploma)プログラムを新しくスタートしている。コース終了時点で日本語能力試験N2以上の日本語能力を目標としている。2011年からOBTLを導入しているが、まだシラバスに入れただけの段階でまだ学習者に浸透していない。2014年にデザインを見直すことになっているコースである。 

JF日本語教育スタンダードは「相互理解のための日本語」を理念とし、「課題遂行能力」と「異文化理解能力」が必要であると考えている。JFスタンダードの活用事例は日本国内と海外にあるが、まだ多くない。先行研究もプーリク,イリーナ(2010)などに限られている。筆者は2012年に日本国際交流基金の教師研修に参加し、「JFスタンダードの木」と「Can-do」について理解を深めた。そこで体験したJFスタンダードの取り組みを香港の日本語コースで活用する方法を探ってみた。

この研究では2012年第一学期前半(9月末から11月中旬まで)の「総合日本語1」でJFスタンダードを利用して、各授業の学習目標を設定することと学習記録ポートフォリオで学習過程を記録し保存させることを試みる。そして、この期間の成果を踏まえ、全体の改善を図ると同時に、2014年のコースデザインの見直しの土台と理論づけにしたい。

「応用日本語1」コースの対象者は高校を卒業したばかりの学生が中心で、2年間フルタイムで19科目(56単位)、計840時間の日本語授業を受けることになっているが、このコースでは週16時間60時間の勉強をする。Can-doを利用すれば、具体的な学習目標を設定することもできるし、学習目標と学習活動と学習成果の評価を一貫性のあるものにすることもできる。

「応用日本語1」の学習者は学習目標が明確な日本語学習者で、日本語学習自体が目標である。目標言語は外国語としての日本語である。学習者に日本語を使う目的について調査したところ、「旅行」「仕事」「日本で生活」「留学」「日本人の友達と話す」が上位に上がっている。また、筆者の授業観察と調査で、学習者は教室活動より文法の勉強が本当の勉強だと考えていて、練習の中では書くドリル練習が一番好きであることがわかっている。教室で行うコミュニケーション活動やタスクは勉強ではなく、遊びだと思っている学習者もいる。そのために教室活動の意味を目標として設定し、明確的に提示する必要がある。日本語を使って何ができるかを意識しながら学習を進めることがモチベーションの向上につながると考えられる。必要な具体的な言語活動とそれを支える言語能力を関連付けて学習目標を設定することができる。 

この研究では、①自己評価チェックリストの作成、②各授業の学習目標の設定、③コース全体の目標設定の修正、④学習成果の評価(テスト+ポートフォリオ)の四つを中心課題としてJFスタンダードの活用を試みる。ここでは、「総合日本語1」一科目しか扱わないが、今後他のコースも含め、プログラム全体のデザインでJFスタンダードを利用する方法を考えたいと思う。

【参考文献】