月例会発表概要
被災地を巡って

香港中文大学哲学部講師
張 政遠

「3.11」を忘れないために、人は被災地を巡り、震災の傷跡や復興の歩みを自分の目で確かめるだろう。しかし、被災地への巡礼に一体何の意味があるのか。「巡礼」とは、宗教上での聖地巡り・霊場礼拝(pilgrimage)ではなく、忘れかけていた記憶をよみがえさせる実践であろう。重要なのは目の前にある風景を見るだけでなく、むしろその場所の風土と歴史を知り、人々と交流することにあるように思われる。本発表では、和辻 哲郎 (1889-1960)の『古寺巡礼』における「巡礼」という思想を吟味し、岩手・宮城・福島三県での見聞を分かち合いたい。