月例会発表概要

日本語の分裂文の定義について

張 秀娟
澳門大学人文学院博士課程


日本語の分裂文は英語から取り入れた概念であり、「AのはBだ」という構造をもつ文のことを指す。今までの研究は構文的特徴、意味構造、機能という3つの角度からその定義について討議したが、まだ検討の余地が残っている。まず、「AのはBだ」構文以外に、「AのがBだ」構文を分裂文の一種と主張する学者もすくなくないが、構文的特徴と機能から見れば、分裂文と明らかに違っている。また、構文的特徴だけで「AのはBだ」構文を分裂文と判断するのにも理由が不十分であり、その意味構造も考慮しなければならない。今までは変項と値、あるいは問答の関係と主張する研究が多いが、西山(1990,2003)、熊本(1989a,1989b,2004,2007)の研究では、措定文のような意味構造にも解釈されると主張している。本研究では、先行研究に基づいてこれらの問題を解明することによって、分裂文について定義し直す。さらに、分裂文は形式的にはコピュラ文に似ているが、コピュラ文のカテゴリーに帰することはできないと考えている。