日本語図書案内

日本語教育 図書・教材案内 24 号 2015.03
日本語教育 図書・教材案内 24 号 2015.03

みなさま、いかがお過ごしですか。
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バックナンバーは香港日本語教育研究会のWebsiteでご覧いただけます。
http://www.japanese-edu.org.hk/



1. 『留学生のための日本語で学ぶパソコンリテラシー』 
著者:橋本恵子・金子大輔・西村靖史・宮川幹平・岡本尚志・林泰子
出版社:共立出版
発行日:2015年1月25日
ISBN:978-4-320-12383-0
書籍情報:http://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320123830
 コンピューターに関する用語や表現がいろいろ学べる、今まであまりなかった教材です。
 本書「はじめに」によりますと、「本書は日本語能力の向上と同時にパソコン操作能力の向上を図ることを目的にした教科書である。・・・(中略)また、情報教育の教科書としてだけでなく、パソコンを使用した作文指導など、日本語教育の教科書としても利用できるのが本書の特徴である。」
 留学生のためのとされていますが、もちろん、香港の上級日本語学習者にも知っておくと便利な語彙がたくさんありますし、日本語母語話者の方を含めた先生方にも、参考書としてお勧めしたいと思います。
 章の構成は、第1章 Windowsの基本操作、第2章Windowsの操作と活用、第3章Excelの操作と活用、第4章PowerPointの操作と活用、第5章インターネットの活用、第6章情報倫理-インターネット社会と情報倫理-、第7章ビデオ編集、第8章Webページの制作、となっています。本書で扱われているバージョンはWindows 8.1、Word 2013などです。それぞれの章の最初の説明は、日本語、韓国語、中国語(簡体字)、英語で表示されています。また、本文の漢字には全部振り仮名(ルビ)が振られていますので、読み方を覚えることもできます。
 それにしても、コンピュータ関連の用語はカタカナ語が多く、いまさらながら、カタカナ教育の重要性が感じられます。


2. 『日本語を学ぶ/複言語で育つ-子どものことばを考えるワークブック』 
著者:川上郁夫・尾関史・太田裕子
出版社:くろしお出版
発行日:2014年10月28日
ISBN:978-4-87424-635-1 C0081
書籍情報:http://www.9640.jp/xoops/modules/bmc/detail.php?book_id=95928
国際交流基金 日本語教育通信「本ばこ」 来嶋洋美日本語国際センター専任講師 の紹介より
 「現代は「移動の時代」です。仕事や勉強、結婚など様々な理由から海外で暮らす日本人も日本で暮らす外国人も大勢いて、ことばの学習は常に大きな関心事となっています。ところが、大人に連れられて複数の言語環境に身を置き、成長していく子どものことばの問題については、じゅうぶんに認識されていないのが現状ではないでしょうか。
 本書は、そのような子どものことばの学びについて日本語教育の視点から考えることをテーマに書かれたものです。大学での日本語教育の授業、小中学校の教員養成、日本語教師養成講座等での利用が想定されています。
(中略)
▼自分で考え、クラスでの意見交換でいっそう深まる理解
 本書が発している様々な問いかけは、正解を一つにできるような単純なものではありません。大事なことは、その答えを自分でよく考え、クラスの仲間と意見交換をしながらさらに深めていくことではないでしょうか。この1冊をきっかけに、複数言語環境で育つ子どものことばの問題を単に日本語教育の枠で収めるのではなく、人間を育てる上での重要な問題として共有することができるでしょう。


本書の構成
第1ステージ 子どもの直面する課題を考える
第2ステージ 子どもの言葉の学びと実践を考える
第3ステージ 子どものライフコースを考える

 日本には今まであまりなかった、言語教育というよりは、児童心理学や社会学、異文化理解、いろいろな分野をクロスオーバーした教材だと思います。ただ、香港はすでに小学生全部が英語も中国語(普通話/北京語)も学んでいる複言語社会ですので、ここで紹介されている活動や理念はすでに新しくないかもしれません。私は、香港で教える先生方や、日本語を継承言語や母語とするお子さんをお持ちの方々が、本書を見てなんとおっしゃるか、ご感想をお聞きしたいと思っています。


3. 『すぐに使える 日本語会話 超ミニフレーズ200』 
著者:森本智子・高橋尚子・松本知恵
監修:水谷信子
出版社:Jリサーチ出版
発行日:2014年11月10日
ISBN:978-4-86392-206-8
書籍情報:
http://www.jresearch.co.jp/isbn978-4-86392-206-8/
 初級後半から中級までの学習者向けの、会話のフレーズ集です。本のカバーの袖には次のように書かれています。
「この本の特長:
1)短いフレーズばかりだから、すぐに覚えて、すぐに使うことができる。
2)日本人が毎日のように使うフレーズの中から、より基本的なもの200を厳選。
3)一つ一つのフレーズについて、意味だけでなく、使い方やニュアンスがよくわかる。
4)全面的な対訳のサポートにより、一人でも負担少なく学習を進められる。
5)すぐに使える実践会話例を焼く1000収録。CDを聞き流すだけでも力がつく。」

 丁寧な表現では「恐縮です。」、「ご迷惑をおかけしました。」、「なかなか難しいですね。」、「いいんじゃないですか。」、カジュアルな表現では「まじで?/まじ?」、「そうなんだ。」「だめだ。」など、アニメやマンガ、テレビドラマでよく耳にするフレーズや、会社や学校で適切に使えればかなり効果的なものまで掲載されています。
 使い方の説明は英語で書かれています。フレーズは、漢字が使われていれば振り仮名が、さらにローマ字表記もあって、初級の学習者でも、時間のちょっとあるときにページをぱらぱらめくっても楽しめると思いますし、しっかり勉強しようというときには、カテゴリー別に見て、類似の表現の使い分けを見ることもできます。CD2枚付きですので、せりふを繰り返して何度も言って覚えるようにすれば、「流暢な」日本語話者を目指す学習者に役立つと思います。
 2015年1月には同出版社から「どんどん話せる!日本語会話フレーズ大特訓 必須800」も出版されました。こちらも説明は英語です。


4. JF日本語教育スタンダード準拠 ロールプレイテスト Website
会話能力あるいはコミュニケーション能力を測るための試験をどのように実施したらいいか、資料や例をお探しの方にお勧めのサイトです。
 ここでご紹介するのは、基金が提案する15分程度の会話試験の実施方法と採点基準です。レベルはJF日本語教育スタンダードA1からB2までです。ロールプレイの進め方の手順の説明などに加え、それぞれのレベルのロールカード、採点表などもついています。ロールカードのタスクは、例えば、A2では、日本に旅行に行って日本語を使うことを想定した「「あなたは今、日本にいます。デパートで、とてもいい色の服を見つけました。しかし、サイズが合いません。お店の人に相談してください。」というタスクなどがあります。一方B2になると、「あなたは昼休みに日本人の同僚とおしゃべりをしています。最近、社内の連絡をメールで済ませ、同僚たちとほとんど話さない人が増えています。、社内の連絡はできるだけ直接話をしたほうがいいか、それともメールを中心にしたほうがいいか、自分の考えをどちらかに決めて、理由を示しながら同僚と話してください。」というようなタスクになります。また、応用編では、「テストのカスタマイズ」として、自分の学生に適した新しいロールプレイ案の作り方のガイドもあります。
 さらに、下の①のサイトには、試験の流れが見られる動画もありますので、ちょっとご覧になってみてください。

①テストのダウンロード:
http://jfstandard.jp/roleplay/ja/render.do

②日本語教育通信に掲載されている同試験の紹介:
http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/tsushin/news/index.html


上記の本はいずれも香港日本語教育研究会の日本語教育アドバイザーの執務室に1部ずつありますので、閲覧をご希望の方は、まずは、メールでご連絡ください。


5. 『漫画異文化手習い帳―日本語で紡ぐコミュニケーション』
著者:文化庁文化部国語課 編纂
出版社:コトコト
発行日:2007年9月
ISBN:978-4903822921
 3月14, 15日に香港公開大學で開催された香港日本語教育セミナー及びワークショップの素材として、講演者のお一人である南山大学教授 鎌田修教授からご紹介いただいた本です。漢字にはすべて振り仮名がついています。
 「本教材について」によれば、同書は、調査による186の事例に基づいて作成され、さらに日本語学、日本語教育学、異文化コミュニケーション学、漫画学の専門家の確認修正を経て完成されました。対象者は、「基本的な文法や語彙、漢字を習得し、日常生活に役立つ会話や簡単な読み書きができる能力既に習得している日本語学習者」となっています。 
 構成は、全3章から成り、第1章 「ことばを使ったコミュニケーション」、第2章 「ことばを使わないコミュニケーション」、第3章 「その他のコミュニケーション」があります。各章は、①「あなたはどうですか?」、②「マンガ」、③「漫画の解説」、④「あなたはどうですか?解説」、⑤「コラム」によって構成されています。
 鎌田先生のワークショップでは、同書を使ったグループプロジェクトの例を見せていただき、参加者も、同書を素材にしたディスカッションなどを体験し、香港と日本の文化の比較について大変楽しく、かつ興味深い話し合いができました。香港の方々が「香港では・・・」という発言に「私は違う」と異議を唱えたりするシーンもあって、異文化だけでなく自分の文化の再認識にも役立つ素材だと思います。


このたび、4月10日を持ちまして帰任することとなり、私がお届けする「日本語教育図書・教材案内」は本号が最後となりました。
3年間、ありがとうございました。
いろいろ工夫して教材を探してみたのですが、何かお役に立つものがございましたでしょうか。
みなさま、どうぞお元気で、そして、益々のご活躍をお祈りしております。

国際交流基金 海外派遣日本語教育専門家(香港日本語教育アドバイザー) 
宇田川洋子